SSブログ

百合のブログ小説1弾『姫君と令嬢の流儀 第3章 輝く夜に閃くは朱き華 2幕』 [百合小説:ブログ小説]


■スポンサーリンク■
 
 

 
姫君と令嬢の流儀 第3章 輝く夜に閃くは朱き華 2幕





 白雪との打ち合わせ通り、決戦は間違いなく土日の休日になりそうだった。となると、問題は場所の選定である。というわけで、山さんには連絡をとって、場所の選定をお願いすることにした。
 私から関連を断っておいてなんだが、私がうろうろすると、場所によっては相手のストーカー女が襲ってくることも考えられる。向こうが襲うにたる条件の場所を選定しようとしているのだから、その確率が跳ね上がることは間違いがない。
 結局、秘密裏かつ大規模に条件に見合う場所を探すとなると、ある程度は警察の手を借りる必要が出てきた。あれだけ見得をきっておいての行動であるから、面子も丸つぶれというものだが、それはこの際諦めるより他はない。やれることは、全てにベストを尽くすと決めたのだ。
「山さん、あれだけ言っておいて、いまさらこんなお願いをしてしまい、申し訳ありません」
「構いませんよ、お嬢。私らにもお手伝いが出来る……むしろ私たちにも役回りができて、嬉しいのですよ」
「そういっていただけると、助かります」

 選定場所は、人気の少ない郊外などの場所だ。それに加えて、人口密集地からも離れたところ。最後に、退魔組織の勢力圏から出来るだけ離れている場所、以上の三点が必須となる。
 その上で、こちらに更に都合のいい場所を絞り込んでいく。その指針はひとまず置いておくとして、前の三点を満たしていない場所はそもそも選択肢に入らない。
「まあ、退魔組織の勢力圏だと、連中が介入してくる危険があるからな」
 白雪の口調は、至って気楽なものである。少なくとも退魔組織そのものを警戒している様子は、全くない。まあ、おそらく白雪が直接退魔組織と出会うことはあるまい。そうなるように、こちらが舞台を整えるからだ。
「そうだな。介入して来たものたちのせいで、状況がどう動くかは、全く予想がつかないから、不確定要素は排除しておきたい」
 退魔組織の連中が介入するのは、こちらの筋書にはない。というより、そういった状況では向こうが仕掛けてくるまい。結局、頼れるのは自分たちだけだということだ。
「まあ、邪魔者はいらないからな」
 そういうと、しらゆきは私の耳を後ろから軽く噛んできた。今の私は、白雪の片膝に乗っている状態なので、その動作を察知できずに思わず身悶える。
「白雪、まだ情報の整理が終わってないぞ、もう少し待て!」
「ふーん。もう少し待てば、いろんなことをしてもいいわけだ。お前も淫らなことをいう女になったものだ」
 そういうと、白雪は右手で私の胸を軽くなでるように弄びながら、左手で私の服の中の鎖骨をゆっくりとなぞりだした。
「だから、待てと言っているだろう? お楽しみはそれからでいいだろう」
「おや、そんなことをいうとは。いったい誰の影響だ?」
「よおく、女を悦ばせる手管に通じたお方にですよ、姫君」
 そういうと、今日は珍しく私の方から、白雪に向かってゆっくりと唇を向ける。白雪もゆっくりと唇を合わせる、やさしい口づけを交わした。

「で、情報はどうなっている」
「いま、まとめに入っているところだ……というか、そんなに暇なら暇つぶしに付き合ったらどうだ?」
「ごめんこうむるね、そういうことは臣下のなすことだ」
 今はさすがに白雪の片膝には乗っていない。いくつかの条件を付けらえた場所の情報を見て、書き込みが出来るように紙で出来た大きめの地図などと照らし合わせながら、場所を絞り込んでいく。山さんには、必要な条件を言っているため、今の場所は三点以外にも必要な条件は揃ってはいるが、地図などを参考にした上で、最適な場所を絞り込むのは、こちらの仕事だ。
「まあ、あまり詳細な条件を口にしてないし、実際に必要な条件を満たしているかも確認したいところなんだが」
「私達が調べに行くには、あまりにも怪しいからな」
 そう、私たちのどちらかが一度調べに行ってしまっては、再度そこに向かう行為自体に罠がある、と相手に知らせるようなものだ。そうでなくても、相手が慎重にはなるだろう
「で、あいまいな条件で探索をお願いしたから、最適な場所といっても、なかなかな……」
「場所の選定を誤ると、全てが台無しになるぞ」
「分かっているさ……そうだな、ここでどうだ?」
「うん?」
 白雪が、私が選定した地図の場所を、詳細に覗き込む。そして、一点に目をやる。
「廃館があるようだな。旅館か別荘の類か?」
「ああ、元別荘の方だな。だから他に特に家屋がないようだ。中の状態も比較的良好らしい。『隠形で誤魔化せそう』か?」
「ふむ、まあ確信とまではいかないが、ほぼ相手の魔力感知の特性については、間違いないと思っていいだろう。だから、『隠形で誤魔化す』ことは中の構造しだいだが、ほぼ確実に出来るだろうな」
「そうか……学校とかでは目立ちすぎるからな。ここがいいと思うが、どうだ?」
「異存はない……どうせ、直接は確認できんのだから、ある程度は賭けになるのはしょうがない。が、賭け事としては割合分がいいと思えるな」
「では、決まりだな」

 
 そう、戦いの舞台は、この朽ちた館風の別荘で、決まりだ。ここに相手を誘い出して、一騎打ちを狙う。のるかそるかは、状況次第だが。それでも、特に分が悪い賭けにはならなさそうだ

「そろそろ、しつこい女との『縁(えにし)』は、ここで断ち切っておきたいものだ」
 ついでに、白雪が私の下半身に手を入れようとしているのだが、こういった真面目なときにまで、過剰なスキンシップを図ろうとするのも、やめさせたいものだ。
 ……白雪に触れられるのは、むしろ気持ちが良くて安心するのだが。調子に乗るのが目に見えているので、それはいってはやらないことにしている。


 短刀を手に握る。強く、強く覚悟を胸に刻み込む。やるべきことは全てなした。山さんへの連絡も完了している。白雪は、事前の説明通りに動けるように、いつもの着物を見に纏っている。白染めの生地に朱色の帯が鮮やかに映えている。
 灰色の瞳には、いつものふざけたような様子はない。獲物を狙うように、ただ真剣に遠くの目標に狙いを定めている。
 私は、父の姿を思い浮かべた。こだわりを捨てきれなかった父の姿を。そして、そのこだわりと覚悟を貫き通した父の姿を、自分に重ねる。今日身に纏う子の服は、父と同じ漆黒のコートだ。返り血が目立たないようにと、父はこれを好んで羽織っていた。

 それを羽織り、私は家を後にする。帰ってくるときは、白雪と一緒だと信じて……
 
 
  
 
第3章 輝く夜に閃くは朱き華 第3幕へ続く

 
 
 
 


■スポンサーリンク■
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。