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百合ブログ小説2弾『白騎融合合体ロンギフローラム 2章 調停者と死の魔神たる統率者 1幕』 [百合小説:ブログ小説]


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白騎融合合体ロンギフローラム 2章 調停者と死の魔神たる統率者 1幕

 
 海に撃墜した『イマジネイター』たちは、生命の母である原初の宇宙空間へと還っていった。原初の『イマジネイター』たちと同じく、宇宙生命体・ETとして宇宙で生きる術を学びながら、また自我を形成していくのである。
 生まれ変わった『イマジネイター』たちが果たして本当に人類と共に歩んでいけるのかは、分からない。
 しかし、1つ言えることは、天田空が形代唯に一方的な同類を殺める行為をさせたくない、という感情については、形代唯も似たような感覚を持ち合わせていたのである。彼女は、天田空のためなら喜んで同類だろうが犠牲にするであろうが、同時に天田空と無関係な『イマジネイター』たち同類を一方的に屠ることも、またよしとしてはいなかったのである。
 あるいは、それを理論ではなく感覚で感じ取ったからこそ、天田空のことを形代唯が気に入っているのかもしれない……
 そのことを思うと、形代唯は『オルクス』と『イマジネイター』流に呼んでいた、かつての相方を思い出すのである。『オルクス』とは死の魔神の名だが、それ自体はむしろ死をむやみにふりまくような存在ではなかった。『ジャッジメント』として行き過ぎた仲間の行いを掣肘する旧形代唯に共感し、積極的に協力していた結果である
 ゆえに、その存在はむしろ『イマジネイター』としては冷徹ではあるが、かなり理知的な存在として、形代唯が記憶する数少ない自分と同等クラスと認めうる、『同胞』の1体であった……



 アマネリスとは、事後報告で調査についての方針を語り合った後に、別れることになった。一応、この事件がこれで終了したとは思えないが、かといってこれ以上は基本的には相手の出方を待つしかない。後手に回らざるを得ないというのが、アマネリスと唯の共通見解のようだった。
「私も会議に参加したかったよ、唯」
「ソラ、会議なんて面白いこと、なにもないよ。ワタシは、こうしてソラと会話している方が、ずっと楽しいな」
「唯……」
 唯の瞳を見つめる。そこには人間と違って感情の揺らめきなどは存在しないが、それでも唯の言っていることはきっと嘘ではないと思える。唯の体を引き寄せるようにして、抱きしめた。その柔らかな肢体が作り物だとしても、私の思いが、この体の熱を通して唯に伝わってくれるように祈りながら。
「唯、私、唯のことが大好きだよ」
「うん、私もソラが大好き」
「あの、美少女たちが抱きあっている様は別に見目麗しいから私は嫌いではないのだけれど、出来れば2人きりになってからにしない? というか、唯って空といるときは性格違い過ぎるわよね」
「アマネリス、それはまるでソラの前では猫を被っているように聞こえるよ。ワタシはソラ以外に対してほとんど興味がないだけだ」
「唯、それはさすがにちょっとまずいんじゃないかな?」
 私は、唯に苦言を呈するが、正直それが功をそうしたためしは、ロクにない。唯はかなりはっきりものをいうタイプだが、同時に計算高いタイプでもある。そのはずだが、少なくとも人間関係の構築そのものに関しては、感性というか自分自身が気に入るかどうかを非常に重視していて、歯に衣着せぬ物言いが非常に多いのである
「いいよ、ソラに嫌われなければ。それに、ソラだってワタシが浮気するのは嫌でしょう? まあ、とにかく早く帰ろう。日本支部にも連絡をいれるように言われたから」
「そりゃ、浮気はいやだけれど。私は出来れば皆と仲良くしてほしいな。でも、たしかに日本には早く帰った方がいいみたいだね。高天賀原(タカアマ=ガハラ)さんにも詳しい話をしないと」
「そうそう。というわけで、アマネリス、ワタシは失礼するよ。詳しいことが分かり次第連絡してくれ。私も分子構造などはコピーしたが、『ロンギフローラム・ハイブリッド・フェイズ』の強化の方を優先したいから、調査そのものは遅れると思っといてくれ。つまりは期待するなということだな。では、また会おう」
 そうして、私たちはアメリカに存在する『対イマジネイター戦略研究開発部門』本部から日本支部へと移動を開始した。


 日本支部への移動は、というか『対イマジネイター』以外での移動については、『LHF』への融合合体は基本的に認められていない。『イマジネイター』に対するタカ派を抑えるための交換条件として、そういった盟約が私たちには存在している。
 私たちにまで糾弾が及ばないためには、むやみに力を振るわない、ということに公然と逆らうことはしない、ということは必要不可欠な条件であった。
 というわけで、日本へは基本的に飛行機を用いる。緊急の召集の際には『ロンギフローラム』への合体が認められているので、アメリカまでは『LHF』で飛行して移動したのだが。
 ちなみに、クラスはエコノミーの座席で、当然ながら2人が隣あって座れるようにしてある。というか、唯がわがままをいうので、これはもう公然の約束となっているのだ。
「こういうのが、政治的な駆け引きというものだが、やはり面倒は面倒だな」
「うーん、でもあんまりむやみに合体すると、やっぱり迷惑かけちゃう人もいるしね」
「ふん、非戦闘員の仕事で命を賭けているわけでもないのだから、それ位担うのが責務というものだとは思うが……まあ、ソラはやっぱり優しいね」
「ありがとう。ところで、強化プランって一体何?」
 私は、強化プランというもの自体が初耳だった。というか、おそらく思いついたのは最近なのではないか、そんな気がしてはいるのだが、確信はない。
「前の戦闘で、海から回収された人口知能なんだけど……」
 そういって、手の平を軽く捻るように回すと、次の瞬間には掌の上には丸い物体が突然現れている。そのこと自体は特に唯がする場合には珍しいことではないが、その物体自体は気になる。
「それ、海に落ちていった『HF』に搭載されていたやつだよね?」
「ああ、分子構造なんかは隅々までコピーしたから、こうやって比較的簡単に作り出せるんだけど。もっとも、今回は表面を作っただけだけどね。中身はなかなか、形成するのは骨が折れるから。それに、重要なのは中身ではないんだ」
「……?」
 唯の話は難しすぎて、よく分からないことが、結構あるのだが。今回の話は単純に難しいというよりは、まだ説明の途中なのだということは分かったので、無言で先を促すことにした。
「融合合体時に、ソラの思考から最適な戦闘形態である『ロンギフローラム』を形成していたけれど、いままでは外装の方にばかり拘っていたから。ようするに、見た目や空力なんかだね。重量バランスなんかも調整はしてたけど」
 そうして、唯は掌の上に形成していた球体状の物体を再び虚空に還した。やはり、それ自体は重要ではなかったということなのだろう。
「集積回路のように、エネルギーの格納構造の多重積層化……ごく簡単にいえば、エネルギーの貯蔵体積比率の向上や、貯蔵場所自体を外部ユニットかして実装するとか。装甲の稼働による、各機能の柔軟性の向上とその機能の強化。外部ユニット化の方は前から考えてはいたけれど、現状ではバランスが悪くなるから保留にしてたんだ。でも、もうそうはいっていられないかもしれない。それに……」
 前の部分はおぼろげながら理解出来た。人間を必要としないながらヒト型の姿と思考をある程度模した『HF』は、数を揃えることが比較的容易といえるために、単純に1騎うちに特化している傾向があった状態では、これから先は対処が難しいということだろう。特に、機動力を極端に強化して他の『イマジネイター』よりもはるかに機敏に動作できるようにしてある半面、その性質上長期戦に弱くエネルギー効率があまりよくないし、もともとあまりエネルギーを蓄えるようには本体を形成していなかったらしい。いままでは、あくまで戦闘力だけを追求した合体形態だったのだ。
「ソラも、実戦慣れしてそれなりに強くなっているし、応用力も出てきた。そろそろ、戦闘力だけを追求して一気に戦闘を終了させるのではなく、ソラにも頼った戦闘方法を模索する段階なのかもしれない」
 唯はそういって、改めてこちらを見つめてきた。
「ソラ、これから私は『ロンギフローラム』の改修を始めるよ。まずは違和感の少なくて済む素体の改良から行うけど、最終的にはかなり違和感が出ると思う。ある程度ソラにも負担がかかることになる。それでも、いい……」
 私は、そんな唯に微笑みを向けてから、ゆっくりと唯の唇を自分の唇で塞ぐ。私に負担を出来るだけかけたくない、という唯の姿勢は嬉しい。けれど、
「唯、私たちはパートナーだよ? 負担は2人で分担するものだよ。私は唯だけに重荷を背負わせたくはないよ。必要なら、私は私なりに出来ることをやり遂げてみせる。だから、そんなこと悲しいことはいわせない」
「ソラ、ありがとう」
 それから唯は、なにか私には分からない作業に没頭し始めたようだ。はっきりとした何かがあるわけではない。なんとなく、雰囲気がいつもと違うという程度だが。それでも、『ロンギフローラム』の素体についてバランスを崩さないようにしながら、それでも調整を行っているのだということは、推測が出来た。それについては、私には出来ることはなにもない。だから、戦闘では出来るだけ唯に負担を賭けないように頑張る。そう心に誓うのだった。


 飛行機が日本についてすぐ、『対イマジネイター戦略研究開発部門』日本支部の車が、私たちを出迎えてくれた。とりあえず、今日はそのまま『対イマジネイター戦略研究開発部門』へと向かうことにした。
 高天賀原という人物は、実の所『対イマジネイター戦略研究開発部門』の日本支部において、『重要人物だったわけではなかった』のである。過去形が示す通り、早い段階から私や唯との友好的なコンタクトを提案し、そして実現させた人物が、この高天賀原という人物である。
 実のところ、それなりに重要なポストの人間ではあったが、現在の地位はその『対イマジネイター』の専門家との交渉を成功させた立役者、としての功績が大変大きい。彼自身はそれなりに優秀という程度であったが、しかし彼の最大の才能は、唯にさえロクに警戒をされることのない、人柄の良さにこそあると思われる。
 アマネリスでさえ唯には軽く警戒されているようだが、高天賀原に関しては唯は特にその言動の裏を疑うことはないようだ。その上の連中の思惑は別ではあるが、それでも唯が特に警戒もしない人間というのは、ようするに味方にしておいて裏切られる心配が全くない人物であるということである。
 そういった点は、時になによりも優先されるべき事柄であるのかもしれない。
「ご苦労だったな、2人とも」
 彼も研究員として働いているため、応対のための部屋と研究室が別個に用意されている。今回は2人とも応接室に呼ばれていた。アマネリスとは違い、2人との交渉を真っ先に行えた功績で今のように、2人の仲介役を引き受けるために、彼の権限が拡大したという経緯があるため、アマネリスのように元から応接室とセットでは研究室は設計されてはいない。
 ただ、正直彼を見る人間で、彼が研究者ということを信じる人間がどれだけいるのだろうか? 服装だけはさすがに研究者然としているが、身長180cmオーバーでしかも体格はかなりがっしりして筋肉質である。しかも、目つきがかなりよろしくない。声もなぜか、妙に押し殺したような雰囲気がある。
 ただ、そのような見た目でありながら、実はかなり温和かつ人格者であるというのだから、見た目は全くあてにならないものである。
「ああ、まあそれなりに苦戦したがね」
「ふむ、実はそれに関してはアマネリス殿からは、詳しい報告は受けてはいないのだ。報告書の方は受け取ってはいるが、やはり詳しい話を直接聞きたい」


 私たちは、高天賀原に詳しい事情を説明することにした。その水面下で『オルクス』という『イマジネイター』と接触をした人物が、一体なにを企んでいるのか、いまだに知らなかったのである。
 時間は例の事件の約一週間前。『隕石型イマジネイター』の落下事件までは、あと3週間だというのに、である……


白騎融合合体ロンギフローラム 2章 調停者と死の魔神たる統率者 2幕 へと続く
 


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