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百合ブログ小説2弾『白騎融合合体ロンギフローラム 第1章 彼女たちは調停者 3幕』 [百合小説:ブログ小説]


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白騎融合合体ロンギフローラム 第1章 彼女たちは調停者 3幕

 
 人間に似た形態である『LHF・ロンギフローラム』の動きを制御するのは天田空の役割だが、戦闘時の空力演算や『敵イマジネイター』の戦闘機動運動予測を行うのは、形代唯が担当している。
 ただ、戦闘用の機動演算などを形代唯が行っても、『イマジネイターとしての肉体』をヒトガタにしている唯の方は、人間としての運動方法に関する情報処理を行う余裕が不足している。
 そのため、基本的に戦闘方法の大部分を指導するのは唯ではあるが、それを己の感覚として問い入れて運動を行わせるのは、天田空の役割である。『ロンギフローラム』は、2人の呼吸があってこそ、真の力を発揮することが出来るのだ。そして、それは大抵の『イマジネイター』には到底不可能であった。彼女たちのアドバンテージである。



 空は、水しぶきをあげながら上昇してきたものを見極めようとして、それを一度中断することを選択した。なにかが見えたわけではない。それはある種の勘である。唯が警告を発したものの、それを具体的な回避運動として空に伝えることが出来なかったほどの時間で、空は相手の右側面へ回り込むように回避運動をさせる。
「ぐゥッ!」
「ソラ!」
 力場の余裕を、周りの被害を抑えるために空気の対流などを抑制していた分を、ほぼ回避運動などに回す。近くに建物などがないからだ。もし建物などがあった場合は、この速度で動いた空気の対流だけで近隣に絶大な被害が出る。一応遠距離の物体に被害が出ないように、最低限の力場は被害を抑えるために使用していたが、それでも海は衝撃波でえぐり取られていく。
 戦闘用に全力を発揮した場合は、地上でもマッハ10程度ではない速度で移動でき、しかも私にも大して影響はない。とはいえ、今の運動は内部の慣性の抑制が間に合わなかったために、私にも大きな衝撃が来た。ここまで急激な全力運動は、そう何度も可能なことではない。
 しかし、それで正解だったようだ。いままでいた地点を、なにかの軌跡が駆け抜けていく。それは海に突き刺さって水しぶきと急激な爆発反応を起こしながら、なおも海を突っ切っていく。光の軌跡は一瞬では消えずに、目を焼かんばかりに光を放ち続けている。
「あああ!」
 相手の『HF』、主に人間などの知的生命体を取り込んで敵対してくる(生命体以外を取り込んだタイプもいるが、基本的には知能面で劣る他に対して強くはない)『イマジネイター』の融合体を『ハイブリット・フィギュア』と呼称されているが、それは直前に取り込んでいたと思われる熊に少し似ていた。熊がそのまま2足歩行を始めれば、こんな感じなのかもしれない。
 その、こちらよりも巨体な熊のような『HF』に対して、肉弾戦を挑む。先ほどの一撃は強大この上なかったが、そのあとの対応が若干遅い。こちらが避けたことは察知しているようだが、明らかにこちらを補足するまでが遅い。一気に踏み込んで、その巨体の懐に潜り込む!
「だっしゃぁぁぁ!」
 回避運動を利用した回り込みを抑制する力場推進と、その反動を利用した右膝の回し蹴りを、反応が遅れている相手の『HF』に叩きこむ。というより、躊躇なくめり込ませる。相手の装甲は、力場による衝撃の抑制が間に合わなかったのか、あっけなく砕けていった。
「グゴォ!」
「舐めるなぁ!」
 ようやくこちらを補足して出された左手の爪による打撃を、躱すのみならず、こちらも左腕で掴む。と同時に、右肘と右膝を相手の左腕の関節と思われる個所に向かって、同時に打ち込んで挟み込む。間接は破壊されるどころか、力場を合わせた打撃による挟み込みを受けて、左腕が関節から破壊されてもげた。
 止めのために、もげた左腕の先の部分を相手に向かって放り投げながら、右拳に力場を集中させていく。
「還れぇ!」
 なおも抵抗をしようとする熊と人の融合形の『HF』に対し、左腕で相手の右腕の振りかぶりを受け流しながら、右拳に集めた力場を掌を広げて人間なら心臓に当たる場所に叩き込んだ!
 唯が『人間とイマジネイター』双方の思考を用いることによって、『イマジネイター』としての行動を封じながら、核となっている『コア・モジューラー』を取り出すための攻撃である。
 それだけではない。よほど余裕がない時以外は、『イマジネイター』が構成した形態を分解しながら、その分解した物質を用いて『イマジネイター』を再構成すらしている。さすがに、人間を攻撃する意思を見せた『イマジネイター』はそのまま再構成は出来ないと唯は判断しているようで、再構成された『イマジネイター』はある程度の知識は持っているものの、次世代を担う存在として誕生することになる新たな『イマジネイター』だ。
 肉体などは幼く、まだ力も弱い存在として生まれ変わる。殺すのではない。命の原点へと還していくのである。
「唯、中の人の方は!?」
「大丈夫だ。格納用に空けておいたスペースに入れられた。ちゃんと生体反応もある」
「よか……」
「ソラ!」
 神経を研ぎ澄まし、周りを監視する。唯の方も気付いたようで、空に警戒を促しながら、正確なデータを集めようとする。正確に把握できなければ、まずい事態だ。
 いったい、何体の『イマジネイター』がこちらに接近しているのか? そして、その方向は? 場合によっては撤退することも考えなくてはいけない。自分たちで対処が可能なのかどうか否なのか? それを判断するのは、唯の役割だ。
 私の役割は、それに合わせて最適な行動をとれるように制御をすること。だから、いつでも唯が判断した行動を実行できるように、ただ身構える。
「3騎来てる。等間隔で包囲されている……下から、来る!」
 今度の水しぶきは、3騎同時だった。今度はそれほど急速な回避行動はとらないが、比較的正面に近かった『HF』に対して接近していく。
「正面はアルファ、4時からのはベータ、8時からのはデルタ、今から識別マーカーをソラの視界に入れるよ!」
 私は既に、アルファから攻撃することを考え始めている。アルファに対して今度は、左回りをしながら接近をしていた。その姿形にアルファという識別コードが追加されている。これは混戦になった場合の識別を容易にするためのもので、同時に唯がデータ取得などで情報を入手した場合は、この識別コードを元にして、指示を出すことになっている。
 その識別コードに、今度は情報が追加された。全騎が無生物の『HF』だ。
「いっくぞぉ!」
 今度のアルファ、ベータ、デルタはそれぞれ性質が違うもののようだった。アルファが一番小さな個体、ベータ、ガンマは順に大きな個体になっていく。だが、おかしいこともあった。普通は融合している『コア・モジューラー』の影響を多少は受けるのだが、どれもヒト型なのである。
 『イマジネイター』は宇宙生命体であるために、人間の姿形をしているタイプはいないし、無生物を核とした場合にヒト型になっても、核の方からヒト型を動かす情報は通常なら得られないので、有利な点もほぼ存在しない。1騎なら分かる。だが、3騎ともがヒト型なのは、実に不可解だった。
 が、そういった疑問は脇においておく。それにどうせ、そういったことは唯やアマネリスの方が得意分野なので、今は戦闘に集中することにした。見た目がヒト型だったために、直前まで手加減して『コア・モジュール』を救えるよう手加減して攻撃するつもりだったが、それはやめることにした。
 『イマジネイター』の方は肉体が少々分断されても、唯の力で再構成されれば、また生まれ変わることが容易に出来る。だから、粉々にするつもりで攻撃する。
「砕け散れぇ!」
 左脚で中段蹴りを放つ。足場になる部分に爆発的に力場を発生させて、空中にいる不安定さを補いながら、爆発的な脚力で力場により保護されている蹴り脚が相手を正確に捉え、アルファHFを粉々に粉砕した。
 その間に、他に2騎はこちらに向かって力場を飛ばしてくる。かなり正確な攻撃である上、先ほどの熊型のHFと違ってそれほど隙が生じないよう、ある程度威力を抑制している。だが、攻撃は正確そのものだがこちらの回避運動に対しては、あまり的確な対応をしているとはいいがたいものがある。
「この『コア・モジュール』は、人間の思考などを戦闘用に特化してトレースした、戦闘用A.Iみたいなものだ! 学習能力は高そうだから、長時間戦闘はあまり考えないほうがいい」
「それじゃあ、一気に片づける!」
 ちょうど、攻撃用の力場を溜めることが出来た頃だ。この力場は、広範囲を球状に攻撃することも可能だが、それではおそらく破壊力が足りない。アルファよりは他の2機は大型だし、近距離では引き出しが多い方が有利と見たのか、数の有利を活かしにくいと判断したのか。
 おそらくは、両方の理由で力場による遠距離戦を挑んでくる。それでいて、ちゃんと散開して固まってもいないし、援護が容易に可能なように、互いが大して離れてもいない。
「これでは、難しくないか、ソラ?」
「大丈夫だよ、こうする!」
 相手は高速に移動している。狙い撃ちを避けるためだろう。ただし、『イマジネイター』としての能力自体はあまり高くないようだから、丈夫な形態を作りだせていない。ゆえに、球形に広範囲を攻撃して、一気に薙ぎ払うことにする。
 ただし、球形に万遍なく攻撃しては、相手の耐久力の低さを考慮して尚威力が足りないだろう。だから、一気に殲滅するためには、工夫が必要だ。だから、力場をとばす形を工夫する。イメージするのは、ハリネズミのように無数に飛び出す高密度の力場だ。これなら、球形に広範囲に攻撃をしながら、十分な攻撃力を確保できるはずだ。
 幸いなことに、こういった攻撃方法は距離によって命中率が大きく変わるものの、ベータHFとガンマHFは互いに連携できるようにあまり互いの距離を取り過ぎないようにしている。だから、こちらからも極端に離れてはいない。
 出来る、きっと。唯と2人の力を合わせれば、きっと出来る。そう信じて、覚悟を力に変える。
「終わりだぁぁ!」
 両手に集めた力場を頭上に掲げ、イメージ通りに一気に力場を広範囲に散弾のようにまき散らしていく!
 その攻撃は、もしくはある程度は予測されていたのかもしれない。しかし、物理的に回避運動が間に合うような状況ではなかったようで、ベータHFとガンマHF双方ともに力場の攻撃を受けてまともに動けるような状態ではなくなり、墜落していった。
「やったぁ!」
「ソラ、お手柄だね」
「ううん、唯のおかげだよ」
「いや……最初の回避は、ソラが察知してくれなかったら、きっと間に合わなかったし、慣性制御も間に合わなかったから……痛かったでしょ? ごめんね?」
「それは、唯だって。疲れたでしょ?」
 これまでの戦いで、割と遠慮なしに攻撃を行ったために、唯だとて消耗はしているはずだったのだ。私には、むしろその方がずっと気がかりだった。そとの視界を薄くして、唯の裸で上半身のみが露出している姿を濃く捉える。その愛しくたおやかな頬を、両掌で壊れ物でも扱うかのように優しく、愛おしく包み込む。
「ありがとう。唯のおかげで、私も頑張れたよ」
「私も。ソラを守るためなら、どんなことだって、きっと出来る。ああ、でも、さっきの連中を還してやらないと。あと、証拠も少し回収しておかないとね。色々不自然だったから」
「うん、そうだね、もう一頑張りだね」
「それで、お願いがあるんだけど……キスしてくれる? ソラにキスしてもらったら、きっと頑張れるから」
 そういって、もじもじと恥じらうような仕草をする唯が、あまりにも可愛らしく、いじらしかった。
「うん、それじゃあ……」
 でも、恥ずかしかったから、口づけをしたのはその綺麗な額にだった。やさしく、軽く触れるように唇をやんわりと触れさせる。
「ソラ……もう、しょうがないなぁ。じゃあ、回収作業に移るよ!」
 唯は少々不満げだったけれど、一応は納得してくれたのか、ちゃんと作業を始める用意をし始めた。私も、視界を外側の方を重視して網膜に展開する。まだやるべきことはあるのだ。


 これが重大な事件の始まりであることは、私たちは予想はしていたのである。しかし、これが大規模な事件へと発展する重大な要素の1つに過ぎないということまでは、予想することは出来ていなかったのである……


白騎融合合体ロンギフローラム 第2章 調停者と死の魔神たる統率者 1幕 へと続く
 
 


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