SSブログ

百合ブログ小説2弾『白騎融合合体ロンギフローラム 第1章 彼女たちは調停者 1幕』 [百合小説:ブログ小説]


■スポンサーリンク■
 
 
白騎融合合体ロンギフローラム 第1章 彼女たちは調停者 1幕

 
 世界で初めて『イマジネイター』が観測されて、実はあまり長い時間は経っていない。その中でも、ETとしての存在の確立と、その個体的性質を突き止められたのは、正確には形代唯が『イマジネイター』としての知識を人間に開示したからであった。
 しかし、形代唯の目的は、人類を『イマジネイターの脅威から救う』などというものではない。唯は基本的に天田空の保護だけを考えている。唯にとって当初最も大きな課題は、自分という存在をそばにおいた状態で、天田空を社会的、文化的に保護しつつ生活していく方法であった。

「とはいえ、対イマジネイター戦略研究開発部門』に対して、直接交渉してくるとは思わなかったけど」
 それは、アマネリスがよく口にする過去話の1つである。とはいえ、それがアマネリスをはじめとする組織の権限を強化する要因になったのだから、感慨深くなるのも頷けることだろう。
 唯によってもたらされる(今も時々研究を手伝っている)その情報があればこそ、国連において本来は研究開発を行うだけの部署だったはずの組織が、『対イマジネイター』において絶大な権力を発揮できるようになったのである。
 その情報がなければ、そもそも人類の『イマジネイター』に関する知識やその性質についての理解は、大幅に遅れていたであろうから、今の展開は唯にとってはまさしく計算通りであったのだろう。

「で、依頼の件なんだけど。最近、イマジネイターの破壊衝動に類似した電波観測がされていたのよ」
 アマネリスは腰にまで届く金髪碧眼の美女であり、同時にグラマラスで身長も高い。とはいえ、研究員ということで少々運動不足になり気味であり。若干太ることを気にかけているようであった。とはいえ、彼女は私から見たら実に羨ましい体系である。
 というか、唯でさえ私より身長が少々低いとはいえ、大分胸などが肉感的というか、かなりの自己主張をしている体形である。子供のような体系をしているのは私だけであり、若干そのことにはコンプレックスを抱かずにはいられないのだった。
「その件は知っている。ワタシが連絡を受けて、くだんのイマジネイターに電波交信による警告を敢行したから」
 そう、『イマジネイター』はもともと宇宙で生まれたから、交信手段として音ではなく光の1種である電波を使用しているのだ。それ自体は『対イマジネイター戦略研究開発部門』でも一応掴んでいたのだが、唯が詳しいパターン解析に協力したことで、ようやくある程度は破壊衝動などの極簡単な意思については、パターン解析が出来るようになってきた。
 前は、電波の波形パターンなどから人間が使用している信号ではない、ということから類推してイマジネイターの交信である、ということしか判明していなかったのだから、これでも大分進歩したのである。
「いまいち効果がなかったらしいわね。どうやら、これから破壊行動に出るようよ。まあ、それだけならまだよかったのだけれど……」
「あのときは、たしか『コア・モジューラー』は肉食系哺乳類のクマ科の類だったはずだが、電波による交信はそれっきりで、それ以降は様子見で連絡してなかったから……人間をコア・モジューラーに変えて、地球に関する知識を急速に高めでもしたのかな」
 そうだとすると、少々厄介なことになる。無生物と融合したイマジネイターはあまり情報量が多くないために、地球上では大して強くはない。生物と融合した場合でも、それが人間ほどではないにしろある程度高度な知能を有している存在でなければ、結局は地球に関する知識量で勝る側が大体は有利なのだ。
 だが、人間と強引に融合した場合はかなり厄介である。人間と交渉して双方の合意の上での融合ほど効果は高くないが、『対イマジネイター戦略研究開発部門』などの存在に関する知識を向こうが得てしまうこともあるし、そうでなくても地球に関する知識量が格段に増す。個体的な強さは大して変わるわけではないが、そういった知識量の差があるだけで、罠や隠密行動などを使ってくることも考えられ、敵としては格段に手強くなる。
「ビンゴ! 話が早くて助かるわぁ。で、人間の生活にとって比較的致命的な被害を与えられる場所を探索しているようなのよねぇ。さすがにユイチャンの『スターゲイザー』としての勧告を無視するだけあって、人間をコアにしてもあまりおつむはよろしくないようで」
 実は『イマジネイター』間にも力の格差や知能に関する差が存在する。特に知能に関する項目はある意味厄介で、『イマジネイター側』の知能が低いと唯との実力差が分からないのか、うまく交渉することが出来ないのだ。交渉出来るだけの知能を持った存在なら交渉で戦いそのものを避けることが出来るのだが。
 どうやら、今回の『イマジネイター』は人間と融合して高い知能を獲得したはずだが、それでもなお『イマジネイター』としての実力差などを理解するだけの知能には欠けているらしい。交渉で戦闘を回避するのは、不可能というわけだ。
「ワタシは、その勧告を無視するなら地球側の2人の『ジャッジメント』として、その行動を掣肘するという警告もちゃんと送ったよ。それも無視して、人間をコアとして地球に関する知識を深めながら、なおも破壊行動を続けようとするというのなら、『調停者』として実力行使に動かざるを得ないかな」
「場所は分かるわよね? 一応座標もある程度は判明しているけど。人間をコアに変えてから、こっちのこともある程度知識として取り入れたみたいで、正直正確な場所を追尾するのにはかなり苦労しているのよ」
「それは大丈夫です。いままでも唯と合体した状態なら、すぐに場所が分かりましたし」
「ソラが一緒になってくれているんだもの……ワタシがやれることは全部やってみせるから。ソラのためなら、ワタシはどんなことでも、きっと出来る」
「決まりね。それじゃ頼んだわよ。報酬なんかはいつも通り、日本支部経由で口座に振り込んどくから。お願いね」
 最近の『対イマジネイター』に関する会議は、大体こんな感じである。ほぼ唯一にして最大戦力である2人に任せておけば、大抵はなんとかなるとアマネリスは思っているようだし、それは私も同じだ。唯がいれば、どんな相手も怖くない。
 それに、みんなを守るために、唯と一緒に頑張ると決めたのだ。唯が、それを後押ししてくれた。唯はいつでも私のことを優先してくれる。それがとても気恥ずかしく感じることもあるのだけれど。そういった存在がそばにいてくれることは、とても暖かい気持ちになれる。


「さて、ではソラ、合体しよう!」
「ゆ、唯。恥ずかしいから大声で叫ばないで!」
 唯は地球外生命体・ETであるから、人間的な常識や情緒が欠落していると思われがちだ。しかし、唯は私と初めて融合していこうは、ヒト型を維持して自分で様々な情報などを入手することで、人間的な個性を獲得しつづけている『イマジネイター』でも特に知識欲が豊富で知能面で優れた存在である。
 だから、実は人間の知識に関してはあまり疎いわけではないのである。このような場合、大抵は人間の機微をワザと無視している事が多い。つまり、私が恥ずかしがるのを分かっていて、それを楽しんでいるのだ。
「いや、ソラも声が大きいよ。大丈夫、ここはワタシたちを知っている人間の方が、ずっと多いから。それに、このハンガーの上部が開くまでは、どの道衛星なんかではワタシたちを見ることは出来ないよ」
「で、でも……」
 そうはいっても、恥ずかしいものは恥ずかしい。気の利いた人はあまりこちらをじろじろ見ないようにしてくれているが、大抵の人間は私たちが合体すると聞くと、にやにやしながらこちらを眺めたりする。
 ノリのいい人たちに至っては、口笛で囃し立てはじめたり、祝福の言葉をこちらに送ってきたりする。とにもかくにも、私の方は出来るだけ秘密裏に『融合合体』したいのだ。
「いいじゃない。ワタシたちのことを皆応援しているんだよ? ソラは……ワタシと合体するのがいや?」
「そんなことないけど……! でも……」
 やっぱり、こういったことは、出来るだけロマンチックな場所で、秘密裏に2人きりでしたいのだけれど。残念ながら唯の方は、皆に見せつけてやるといった心持ちでいると思われるから、それはなかなか敵わない。
 それに、実のところ私たちの『融合合体』は、こういった『私たちを外か見えないようにするための専用ハンガー』以外ではなかなか出来ない。私たちのことがバレてしまうと、むしろ私たちの関係者に何が起こるか分からないからだ。
 結局、こうして『対イマジネイター戦略研究開発部門』に所属している人間たちに見られながら、『融合合体』をせざるをえない。
「そ、それじゃあ、唯」
「ソラ、愛してるよ、他のだれよりも、ずっと、永遠に……」
「私もだよ、唯……」
 私たちが抱き合い始めたあたりから、周りの囃し立てるような声が聞こえてくる気がしていたけれど、それももう気にならない。唯の体と顔だけをじっと見つめて、それ以外は目に入らない。唯の唇が私の顔に近づいてくる。


 そうして、私たちは、唇をゆっくりっと、そしてじっくりと口づけをかわす。これが『融合合体』に必要な私たちの儀式だ。そうして、私たちの意識は変質していく。互いの意識が混ざり合い、存在を感じ合い、それでいて違う存在であることを認識し合う。とても愛おしくて、そしてとても悲しく、そしてとてももどかしい感覚の中で、自分たちが変質していくのを感じた……


白騎融合合体ロンギフローラム 第1章 彼女たちは調停者 2幕 へと続く

 
 


■スポンサーリンク■
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。